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2014年6月24日火曜日

モーターレーシングは役割を終えたか

先週の日曜日。

ワールドカップの日本代表初戦の日でしたが、
自分は土曜日からルマン24時間をチェックしてて
日本戦の頃はちょうど夜明けを迎える時間帯でした。
今年のルマンはアウディ、ポルシェ、トヨタとメーカーワークスがしのぎをけずる面白いレースで
とても楽しめました。


明けて月曜日。
勤め先でこんなことを言われました。

「スポーツは生身の人間がやってこそ面白い。
機械の性能が果たす比重が大きくなるほどつまらない。モータースポーツはスポーツじゃないよね。」

「F1もルマンも自転車も、地上波放送してないでしょ。視聴率が取れないからだよね。」

このへんが好物なので、一瞬「えっ!?」と思いましたが、
すぐに、一理あるなと思いなおしました。

もしかしたら、自動車レースはその役割を終えたかもしれない


レースレギュレーション


F1がつまらない。

つまらないのは単に自分が歳を取ったせいだと思ってました。
エンジンが1.6Lターボ化した今年は、映像を一度も観てないのですが、巷の評判は芳しくないところをみると、歳のせいだけでもなさそうです。



F1の楽しみとして、大きくスピード競争、技術競争があると思います。

まずスピード競争なのは当然で、F1たる所以ですね。
速く走れなければフォーミュラレースの頂点とは言えません。
超高速で繰り広げられるドライバー同士、チーム間バトルこそ醍醐味でしょう。

90年代あたりからは接近バトルが少なくなってきたこともあり、
レギュレーションによる対策が取られていますが、
それによって面白さが増しているか、と言われると疑問なところもあります。

技術競争もレギュレーションに縛られています。
過度な技術競争は安全性が疎かになったり、資金力に左右される面が大きくなるので、
F1のレギュレーションは技術の進歩に合わせて改定をうけてきました。
技術競争を謳う一方で、一定の歯止めをかけているわけです。

近年は環境にも配慮して規定されていて、
ブレーキ時に運動エネルギを電力として回収するKERS(2014年からはERSとなった)が代表格です。
一昔前は、スペシャルガソリンを使うせいで排気ガスが目にしみる
なんてこともあったのが信じられませんね(笑)
某イタリアンレッドのチームが使ってたア○ップとか( ̄▽ ̄)


環境対策と両立できないとは言いませんが、速さを競う限りにおいて
環境との両立は筋が悪いと思います。
特に最近のレギュレーションに苦肉の策的な印象を持ってしまうのは
限られた技術競争、環境との両立という筋の悪さ故かな、と思います。

つまるところ、スピード競争面の規制はレース運用ルール、
技術競争面の規制は車両ルールと言い換えできます。
この2つでレギュレーションができているわけですから
レースが面白く無いということはレギュレーションが良くないわけです。


市販車優勢の環境技術


ここ最近の技術レギュレーションの改定は以前と少し毛色が変わってきました。
それは上に書いたように環境に配慮するようになったのが大きいと思います。

一昔前、ターボやスーパーチャージャーなどの過給の目的は、手軽にパワーを得ることでしたが、最近は燃費とパワーを両立するために用いられるのがトレンドです。
2L程度の自然吸気エンジンが載るような車格の車に、
1.4Lといった小さめのエンジンを積んで加給する手法は、VW等のヨーロッパ車を中心に普及しています。
実際、今のVWゴルフVIIなどの実燃費には、本当に驚きます。
元々ヨーロッパではディーゼルエンジンのシェアが高いこともあり、ディーゼルと相性のいいターボを組み合わせることは自然の流れだったのかもしれません。


日本ではハイブリッドが主流で、ヨーロッパでもハイブリッド車が出始めていますが、
エンジンとは別に、モータやリチウムイオン電池など本来であれば不要なものを
燃費のために敢えて載せなきゃいけないところに、イマイチ感があります。
エンジン本体の燃焼効率を突き詰めることや車両の軽量化など、
車の構成要素自体のブラッシュアップこそが燃費向上につながるんじゃないか、
と素人なりに考える自分にとって、マツダのスカイアクティブやVWの小排気量ターボの方が
本質的な意味でのエコエンジンと思えます。
それはさておき。


自動車メーカー各社がハイブリッドやエコエンジンなどの技術を研ぎ澄ます中で、
F1エンジンで必要となる技術とのギャップが大きくなってきたのは当然かもしれません。
どちらも内燃機関ですから、原理的に求められるものは大きくは変わらないのですが、
0.1秒速く走るためにレアメタルを惜しみなく使うなど、
おおよそ市販車にフィードバックするのが難しい技術開発を、
F1の為だけに行うことが難しくなってきたのです。

第一期のホンダF1チームを引っ張った中村良夫さんの名コピーに
「F1は走る実験室」というのがありますが、
本当に実験だけで製品にフィードバックできなくなっては
自動車メーカーとして参戦の意義がありません。

F1としてもその辺りの事情を汲んで、近年のレギュレーション改定をしているはずです。
そうでないと、1.6LターボエンジンにするとかERS載せるなんて言わないよね。

だから昔のように、技術が進歩し過ぎて困るからとか、ホンダエンジンが優秀過ぎて嫌だから
といった理由でのレギュレーション改定ではなく、
自動車メーカーの都合を鑑みたレギュレーションになっているのが、現代F1だと言えましょう。
むしろ、そういった技術は市販車の方が進んでいるとも言える状況。

「F1→市販車」であった技術革新が「市販車→F1」になっている

この状況こそ、F1の魅力のひとつである技術競争に魅力が足りない原因ではないでしょうか。
その土俵が環境なだけに、自動車として避ける事ができませんし、
それ故に「市販車→F1」という技術の流れは、まだしばらく続くと思われます。
また、それが足を引っ張って、
もう一つの魅力であるスピード競争自体をもつまらなくしている可能性も否定できないと思います。


そしてアメリカは興行として割切る


さてさて、先のエントリの通りアメリカではどうか。

インディカーにしてもNASCARにしても共通しているのが、車両の共通化。
予め決められたシャシーやエンジンを組合せて使用するので、車両の技術的な差はなし。
ドライバーの腕やチームのレース戦略で勝敗を決める、まっことシンプルなものです。
技術競争が無い代わりにエンターテイメント性が高い、アメリカならではのレースですね。

技術競争がないなら自動車レースじゃなくてもいいじゃん、というのもごもっともな意見。
自分もどちらかと言うとそういう意見ですが、考えてみると意外ないいことが。

つまり、環境を考えなくてもいい
エンターテイメントですから。レースはお祭りです。興行なんです。
あくまで自動車は手段であって、車両の性能向上は目的ではないのです。
速く走れるかどうかは、ドライバーの腕次第...。

F1で言うところの、大きな魅力の一つ(技術競争)が欠けたものですが、
そこを大きく取り上げないことで
環境問題との対立を巧みに避けることに成功しているように見えます。
全く環境を考えていないわけではありません。
F1と違うのは、自動車レースに内包されてしまう環境問題に対して技術的解決を目指すのではなく、
レース運用のルールとして扱える部分が大きなメリットです。

これはアメリカのレースが当初より目論んだことではなく、
今、結果として可能となっているに過ぎませんが、
F1のようにレギュレーションをこねくり回さなくてもいいのは、
レースの楽しさを損ねず、参考にできる部分があるように思えます。


自動車レースは役割を終えたか


レースが果たしてきた役割。
それはカーレースが好きな人の数だけあるのかもしれません。
ある人はスピードに魅力を感じるでしょうし、ある人は自動車技術に興味を持つかもしれません。
はたまたレーシングドライバーに憧れるとか、エンジン音がいいとか、レースマネジメントに学ぶとか
切り口の数だけ役割があるでしょう。

ただし自動車である以上、環境配慮をしないわけにはいきません。
環境技術とレース技術をどう融合していくかは、もう一つのレースの役割になっています。
これが上手くいかない限り、自動車レース自体の魅力は無くなっていくことでしょう。

あるいは、アメリカのように運用で割切るのも手です。
だって環境技術は市販車の方が明らかに先を行ってますし、それを速さを求めるレースで培うのは難しいと思うから。


最後に。
レースはモータースポーツではありませんよ。スポーツとは違うんです。
レースなんです。
モーターレーシングなんですよ。